Box 2D 標的遺伝子発現と異所的発現スクリーニング
標的遺伝子発現
発生過程において、特定の場所、時間で遺伝子を発現させる技術
1つの方法は、ある遺伝子に、P因子媒介性形質転換などの遺伝学的技術を用いて、対象となる遺伝子に熱ショックプロモーターを付加する方法
この方法により、胚の保存温度の急激な変化に伴い、遺伝子の発現をオンにすることができる
温度を調整することで、このプロモーターが挿入された遺伝子の発現時期を調節でき、本来とは異なる発生段階で遺伝子が発現することで起きる影響を調べる事が可能
他の標的遺伝子発現の方法は、酵母由来の転写因子であるGal4を用いたもの
Gal4タンパク質は、Gal4結合部位があるプロモーター制御下の遺伝子の転写を活性化する
ショウジョウバエでは、Gal4結合部位を挿入することで、Gal4応答プロモーターを持つ遺伝子をつくることができる
この遺伝子を発現させるには、胚にGal4タンパク質がつくられる必要がある
目的の状況で発現することがわかっている遺伝子の制御領域を、酵母Gal4遺伝子をコードする領域を挿入したP因子で形質転換することで、Gal4タンパク質を特定の場所、時間で作ることが可能
https://gyazo.com/df247f9dee7eb2603b7fd285bcc5f5f0
より汎用性のある2つ目の方法は、エンハンサートラップ(enhancer-trap)技術に基づいている
Gal4をコードする配列が結合したベクターが、ショウジョウバエのゲノムにランダムに組み込まれる
Gal4遺伝子は組み込まれた位置に隣接するプロモーターやエンハンサーによって制御され、その制御下の遺伝子が正常に発現する場所や時期にGal4タンパク質もつくられる
この技術を用いて、様々な目的のために、様々なパターンでGal4を発現する多くのショウジョウバエ株がつくられている
目的の遺伝子は、Gal4タンパク質がないと不活性状態
特定の組織でその遺伝子を活性化するには、例えば、その組織でGal4を発現するハエと、目的遺伝子で形質転換された制御領域にGal4結合部位を持つハエを交配させればよい
ハエ成虫の頭の感覚神経でのengrailedの発現を調べたもの
https://gyazo.com/e1f280838937f2914929f3478e8b93cf
engrailed-Gal4の融合導入遺伝子を持つショウジョウバエ系統を、Gal4応答性のGFP導入遺伝子を持つ系統と交配させている
engrailedが発現する細胞においてGFPが発現し、緑色に光る
Gal4システムを用いて遺伝子を新たなパターンで発現させることもできる
Gal4システムを使用して、例えば、ペアルール遺伝子even-skippedを奇数番目の擬体節ではなく偶数番目の擬体節で発現させると、クチクラの小歯状突起のパターンが変化する